morilog

東京⇒鹿児島⇒鎌倉と移住した20代男子の日々の記憶や記録、気づきをつづるブログ。

地域で頑張る全ての挑戦者に捧ぐ~ローカルベンチャー-地域にはビジネスの可能性があふれている-を読んで~


届いたその日に最後まで読み切ってしまいました。(すぐにアップしたかったけど、時間がかかってしまった、、)

この10年間に西粟倉村で起きていたことを西粟倉・森の学校、エーゼロの2社を経営されている牧さんが初めてまとめられた「ローカルベンチャー~地域にはビジネスの可能性があふれている~」。

いろいろと頭の中に残った言葉をピックアップしておきたいなと思います。(未読の方はご注意ください。)

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本の概要

今、村の最前線で起きていることから、地域再生マネージャーとして外部から村に関わり始めた牧さん自身の原体験、そして現在に至るまでの過程を、牧さん、村役場の方、ローカルベンチャーの一員として村にやってきた方、ローカルベンチャーなマインドを持って働かれている方など様々な目線から、西粟倉村で起こり始めた「ローカルベンチャーのうねり」がまとめられていました。

これまで仕事を通じて関わらせていただくことが何度もありましたが、これまで知っていたことが、「あぁなるほど!」とより深まる部分も多々ありました。本当に奥が深いことが多いです。

ただただ凄い街だと思われている方も多いかと思いますが、その始まりはどこにでもある自治体で、そこからどんな歩みをしていたのかがよくわかります。

既に地域で挑戦している人も、新たに地域でのキャリアに踏み出そうとする人にも、ひとつの考え方としてぜひ読んでいただきたい1冊です。

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物語の舞台になっている旧影石小学校

岡山県西粟倉村とは?

人口は約1,500人。
岡山県の北と東のはずれにあって、隣は鳥取県兵庫県に接しています。
村の中心を関西と鳥取を結ぶ智頭急行鳥取自動車道が通じていて、鳥取市までは約1時間、関西までは車で2時間あれば到達できる立地にあります。

www.vill.nishiawakura.okayama.jp
冬になれば積雪もある地域で、村内に小さなスキー場も設けられています。

村の中心産業は林業で、約50年前に植えられた人工林からの資源を元に、現在では伐採から最終商品までの加工を村内で完結できる体制を整え、これまでよりも高単価の製品を村外を中心に販売しています。

zaimoku.me


そんな西粟倉村は、2004年に隣接している美作市との合併協議会を離脱し、単独自治体として自立の道を選んでいます。 

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西粟倉村のダルガ峰にて

この3年間で関わらせていただいた中で感じたこと

人口は約1500人ととても小さい村になる西粟倉村。

街の飲食店や小売店は極めて限られるほどで、少し大きめのスーパーは隣町の大原か鳥取の智頭、コンビニは大原まで行かないと存在しない状況です。
大きな商業施設は道の駅あわくらんどあわくら旬の里と村外の人が立ち寄るものが中心になっています。

そんな状況でも西粟倉村では多くのローカルベンチャーが育ったのは、これまで存在していたビジネスを価値のある形で再構築しているのかもしれないと感じています。

例えば、酒うららさんは、村に店舗を抱えつつも自分が売りたいお酒を出張販売する形で営業をされています。強烈な好きが成せる形ではありますが、既存の小売りの酒販には見られない形をとっています。

2016年10月に牧さんが創業したエーゼロ株式会社(創業当時は森の学校ホールディングス)は、今では街の人材育成(ローカルベンチャースクールローカルライフラボ)に限らず、養鰻業(森のうなぎ)、一級建築士事務所、建設業、旅行業など、街にない機能を今の環境に適応させる形で再び実装して社会に対して価値を提供しています。

2016年後半から建てられた新しい村営住宅はエーゼロ株式会社が建設業として携わり、村の職人さんを取りまとめて6棟の住宅を完成させました。
2018年5月にはほぼすべての住宅に入居者が決まり、村に転居して働く方々の住まいとなっています。

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西粟倉村内にあるエーゼロハウス(2017年4月当時)

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村の木材をふんだんに使った内装。もちろん製材は西粟倉・森の学校が担当。

こんな人には特にこの本を読んでほしい

実際に地域の第一線で新たなチャレンジに取り組まれている方もですが、同じく地域の現場で取り組まれている行政職員の方々にも読んでほしい1冊です。
特に第5章にまとめられている内容は、頑張って取り組もうとしている方へのエールとして特に読んでいただきたいなと感じています。

昨年、NPO法人頴娃おこそ会の方々と視察で村に伺った時に、村役場の目線からこれまでの取り組みの話を伺って、「牧さんも凄いけど、それ以上に凄いのは役場の方々の存在だ。」と、強く感じることがありました。

特別職を含めても40人に満たない小さな役場には限られたリソースしかなく、一事業の一部分だけに終わらず、起案からクロージングまでをやり切り、自分で決済まで取りにける環境が元々あったからできたことも潜在的にはあるのかもしれません。

とはいえ、よっぽどの都市圏でなければ、合併前には小さな規模の役場であった時期もあると思うと、どこの地域にも素地があるのではないかと思います。

そして現在の西粟倉村役場では、公務員が本業以外の部分に公務としてチャレンジする仕組みが導入されています。

人口が約1500人の村で、特別職の方含めて40人に満たない役場でなぜこれだけのことができるのかは、ぜひ本を読んで、確かめていただければと思います。

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NPO法人頴娃おこそ会の方々と伺ったときの1枚

個人的に印象に残っている言葉など

・価値が生める仕組みを再構築する
・リンと窒素の循環系
・売却ニーズと不動産投資
創発型の地域経営
・指標にチャレンジの量を置いてみる
・「行き当たりばったりからのバッチリ」と「計画にこだわってがっかり」
・本業以外に公務としてチャレンジする仕組み
・地域貢献シンドローム
・本気には本気で応える

ここについては、あまり書いてしまうと本編が面白くなくなってしまうので、気になるキーワードがあったらぜひ読んでみてください(笑)

色々な考え方がある中での一つであるかと思いますが、他の地域にとっても気づきになりうることではないかなと感じています。

最後に

書籍といった形で、これまで10年の西粟倉村のほぼ網羅された取り組みを知ることがとても有難いことなんだなと痛感しています。

この取り組みが本になったことで、もっと地域には可能性がある。循環する生態系がこの先の未来をつくる可能性がある。そんなことに希望を持てる人が増えてくると幸せだなと思ってしまいます。

また私自身が感じている地域の可能性や向き合い方、考え方は、かなり牧さんに影響されているところが多いです。

村内にある若杉天然林でお話しされている話がとても印象的で、なぜエーゼロという名前なのか、なぜ自然の生態系を意識したビジネスを形成しようとしているのか、それはなぜ重要なのかを有難いことに伺うことがありました。

その内容にはとても共感できると共に自分も何かしらの形で実現したいことでもあるなと考えています。

100年200年の森を育む目線で地域を育む。

先人が育てて積み上げてきた価値観も活かしつつ、次の100年をどう作っていくのか。
これまでの常識がほころび始めた末端から変革はやってくるからこそ西粟倉村で物語が始まることになったんだと思います。

私自身も浮足立たずに、今の持ち場で積み上げていくことに向き合いつつ、自分が大切にしたい考え方を忘れずに進んで行きたいと思います。

気になる方はぜひご一読あれ!

www.a-zero.co.jp

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gurugurumeguru.jp